lake2017 の休憩所

英語・音楽・探偵小説・SF・社会情勢等ゆるく書いていきます。

「バレン・ドリーム」と私

本日は Mr. Sirius のデビュー作「バレン・ドリーム」について書いていこうと思います。本作は大阪のプログレッシブ・ロックバンド、ページェントでアコースティック・ギターとフルートを担当していた宮武和広の実質的なソロアルバムで、この人の失恋体験とそこからの立ち直りをモチーフとした 7 曲 (アルバムのバージョンによっては "Intermezzo" を除く 6 曲) で構成されます。繊細かつ緻密な作品で世界レベルでみても 5 本指に入る名作です。ひとまず 1 曲聴いていただきましょう。「峡谷倶楽部」です。



Mr. Sirius - All The Fallen People


私がこのアルバムを聴いたのは、浪人生の頃。このブログの「棚卸し」というエントリで書いた事件から半年が経とうとしていました。表面上明るく受験生をしていましたが、内心絶望していて人生になんの意味も見いだせずに過ごしていました。あまり真面目な生徒とは言えず、ろくに授業にも出ずに予備校近くの書店で洋書を買いこんでウォークマンでロックを聴きながら読みふけっていました。


ある日、ロックの輸入盤を探すつもりで難波の新星堂 Disk Inn (ユーロ・ロックを探しにいっていたのでこの店のはずですが記憶が怪しい) に立ち寄った時にたまたま見つけたのがこのアルバムです。


本作の LP 自体は 1987 年頃に発売されていて、某 FM 誌に難波弘之が絶賛する記事を書いていたので存在自体は知っていました。それが CD 化されて再発されたのがその頃だったのです。特に何も考えずに他のアーティストのアルバムと一緒に購入しました。(一緒に買ったのは Renaissance のベストアルバムだったと思いますが、記憶にありません)


一聴して、美しいジャケットに「不毛の夢」というタイトルが付けられたこのアルバムのテーマがあまりに自分の置かれている境遇にそっくりだったことに驚きました。おそらくこの作品の作者は私が持っている心の傷と同じものを持っている、と。そしてそこからどうやって立ち直ればいいのかも。


件のエントリで引用した「ラグリマ」を聴いて涙が止まらなかったのを覚えています。詞もサウンドも当時の私の心象風景そのものだったので。そしてタイトル曲で示された絶望の後の希望に浄化される思いでした。「とりあえずもう一度生きてみよう」と思ったのです。


そういうこともあって、このアルバムは私にとってとても特別な 1 枚です。これからも特別な作品であり続けるでしょう。悲しい記憶には封印をして……。