『ドグラ・マグラ』の読み方
今日は夢野久作が昭和10年に発表した大作『ドグラ・マグラ』についてご案内しようと思います。1300枚におよぶ長さと奇抜な内容で、『黒死館殺人事件』や『虚無への供物』と並んで「三大奇書」のひとつと目されています。世間からは難解だと思われているこの作品、2点気を付ければするするとエンタテインメントとして読めてしまうというあたり、ちょっと解説していきますね。
ちなみにあらすじはあえて紹介しません(ぉぃ)。何が書いてあるのか分からない状態の方がスリリングな読書体験ができると思うからです。
一般的にこの作品は「ミステリ」「幻想小説」「怪奇小説」に分類されていますが、私なりになりに内容を紹介するなら「幻想怪奇SFサイコミステリ」であります。一見荒唐無稽に見える筋立てを当時としては非常に先進的で科学的な骨組みで展開している以上、これはSF以外の何物でもないと思います。このあたりSF作家の横田順彌さんが気付いておられましたが、他に論じてる人はいたかな?
この作品をSFとして評価した場合、『宇宙の眼』などのフィリップ・K・ディックの現実崩壊系の作品に約20年先行していることになります。実際、この作品の持つ現実崩壊感はディックと読み比べてもかなりすさまじく、現代の読者も腰を抜かすと思います(角川文庫が昔文庫の帯に書いていた惹句「精神に異常をきたす」云々はさすがに嘘だと思いますが)。というわけで、この本の読み方の1点目は「SFとして読む」であります。
そして、この小説の作品内作品としてかなり長い阿呆陀羅経が出てくるのですが、ここで挫折する人が非常に多いようです。どう読んでいいのかわからないという声が多いのですが、これは今で言うラップです。木魚の音をビートと捉え、声を出しながらノリノリで読んでみてください。難しいところはひとつもないはずです。これがこの本の読み方の2点目です。
以上を踏まえた上で読み取ってほしいことですが、表面上かなり恐ろしい作品であるにもかかわらず、この作品の背後には作者の「情熱」と「愛」に満ちあふれています。ネタばらしを避けるためにどう描写されているかを具体的に書くことはしません。ただ、人間の尊厳について真面目に書かれた小説だということだけコメントしておきます。
さて、この作品、著作権が切れておりますので「青空文庫」でテキストを入手できます。でも、個人的には紙の本で読んでほしいですね。おすすめは創元推理文庫『日本探偵小説全集 4 夢野久作集』です。これには短編『瓶詰の地獄』と中編『氷の涯」も収録されており、夢野久作ワールドの概観をつかむのに最適です。ぜひお読みになってください。ではでは。